「方法論さえ理解すれば、誰でも成功出来る」 という理屈 [マンガマニヤック]
僕の山田ベスト10の中で10位くらいにはランキングされているくらいに大好きなヤーマダーの玲司さんが、『絶望に効くクスリ』 という、毒にも薬にもならない社会科見学漫画をヤングサンデーという雑誌で連載をしているのですが、同じ木曜日発売の週刊モーニングでは、ドラマ化もして大人気の、『ドラゴン桜』 という、「素レスで東大一直線」 な漫画が連載されております。
この二つ、作品内のメッセージも作者のスタンスも、面白いほどに正反対なのでその対比がまた面白いのですが、とりあえず『絶望に効くクスリ』 の事は置いときまして。
今週の 『週刊プレイボーイ』 で、『ドラゴン桜』 の著者、三田紀房氏のインタヴュー記事がありまして、それがまぁまた玲司たんと真反対で面白かったのです。
記事そのものは、よくある、「ちょっと話題になった成功者の成功論を拝聴しよう」 構成の記事だったのですが、その三田氏の成功論というのが、表題、「方法論さえ理解すれば、誰でも成功できる」 という理屈。
記事の内容からもってきますと、つまるところ世の中で 「勝ち」 を得ようとしたら、「その為の方法論を知り、それを忠実に実行すれば良い」 というシンプルなもの。
その実例が、「漫画なんか殆ど読まずにいた自分 (著者、三田氏) が、リアルなドラマ展開を捨てて、馬鹿げて派手な演出と設定に、見開きを多用するという “方法論” を実行することで、『週刊ゴラク』 で人気トップを独走をしていた 『ミナミの帝王』 を抜くことが出来た」 という話。
まぁこのあたりはそれはそれで興味深くというか、ほへーというエピソードです。これを試行錯誤の末考えた後に、「それはジャンプ漫画の描き方だよ」 と指摘され、「そうか。成功したければ、既にある成功例や、編集者の言うとおりにやれば良いだけなんだ」 という 「成功論」 に開眼したとの事。
確かに、理にかなっているのです。これは。
この理屈は、現在連載中の 『ドラゴン桜』 内でも度々使われていて、例えば、「自分で考えたがるのは私文脳だ」 等と言われています。
つまり、「考えて分からないことがあったら、その知識やノウハウを持っている人にすぐに聞くこと。そうすれば、無駄を省いて、要領だけ得ることが出来る。それをしないのは、時間を浪費するだけで、東大合格など出来ない、私文程度の脳だ」 という事。
これも、理にかなっているのです。
人類が何故ここまで進歩したのか、という事の一つに、「情報の共有・継承」 が挙げられると言います。
つまり、どんなにコミニュケーションが発達しても、それが世代を超えて伝わり、蓄積されなければ、文化や文明が発達することはなかったと言うことです。
人間の成長速度から言うと、徐々に寿命が延び、三世代くらいの群れが出来て、子から親、そして老人となったものがそれまで蓄えた知識や経験を次の世代に伝えるという世代を超える 「情報の共有と蓄積」 が行われる様になる。
それらに、絵、文字、紙などのツールを得ることで、脳の外に記憶装置を得ることが出来た。これで、それまで個人の脳にのみ留まっていた情報が、様々な方法で共有、継承されるようになった。
だから、他人が残した知識、他者の蓄えたノウハウが有用ならば、それは積極的に吸収し利用し合うべきだ、というのは、正しい理屈なのです。
だから、「方法論さえ理解して、それを活用していけば、誰でも成功できる」
大ゴマをバーンと描いて、馬鹿げた特訓とかやらかして、派手な演出をすれば売れる、という方法論があるなら、それを真似て使えばよい。
まぁそんな理屈です。
が。
これはこれで良いのです。
例えば受験だとか、技能職能を得るというツールに関して言うならば。
ただ。
勿論当然僕としては、それは全部じゃねぇし、それが全部になる世の中なんてすげーつまんねーしなー、と。思うわけです。
つうのは。
「方法論さえ理解すれば、誰でも成功出来る」
というこの成功論は、まぁなんというか。
つまらない人の方法論だからなんですよ。
漫画、に関して言うのなら、まず、全ての漫画が 「大ゴマをバーンと描いて、馬鹿げた特訓とかやらかして、派手な演出をした売れる漫画」 だったら、そんなもん面白くもなんともないですよ。
そりゃー売れるのかもしれません。
漫画大して好きで無い人には。
でも、漫画大好きな僕にとって、そんな世界は煉獄みたいなモンです。
いえ、別に僕は、「大ゴマをバーンと描いて、馬鹿げた特訓とかやらかして、派手な演出をする方法論」 が悪いとか、それで描かれた漫画がつまらないとか言っているのではないのです。
そういう方法論で描かれていたとしても、僕にとって面白いと思える何かがあれば面白いと思うかもしれないし、響くものが泣ければつまらないと思うでしょう。
そうでなく、単純に、そんな、一つの方法論だけで全てが作られる、工場生産的な状況は、僕みたいな馬鹿みたいに漫画が好きな漫画馬鹿、もしくはバカマンガにとって、まったく面白くないと言うことです。
単純な話です。
音楽が好きな人にとって、「モー娘。が売れているなら、全部つんく♂のやり方でやれぱEジャン」 っていう状況が面白くなく、野球好きの人にとって、「巨人が人気アルんだから、巨人だけ放送してりゃEじゃん」 っていうのが面白くないのと同じよーに。
ん? なんか2つめは少し違うかな? まぁ良いや。
結局の所、ここで言われた 「成功論」 っていうのは、「マスのマスの趣味嗜好に合わせておけば金になる」 っていう、まぁそれだけの成功論でしかないのです。
正しいけれど、ただ正しいだけで別に面白くもなんともない理屈。
そして、何より。
結局の所、この 「方法論さえ理解すれば、誰でも成功出来る」 の “誰にでも” というのは間違いで、こういう 「ただ売れる方法論に従うだけ」 のやり方というのは、情念の薄い人にしかできないことなんですよ。
情念の薄い人、対象に対する愛情が少ない人…まー、以前書いた、“つまらない人”。
以前書いたよーに、“つまらない人” である事が悪いとか駄目だとかは、僕は全く思っていないのです。
それはそれで、別によいのです。まぁ、どーでも。
ただ、好きなモノに向き合ったときに、「ただテキストどーりにやってりゃ良い」 っていう割り切りを容易くできる人間というのは、そりゃあんまり居ないわけです。
性格、素養も才能の一つと考えれば、結局良かれ悪しかれ、「テキストどーりで良いと割り切れる、情念の薄さ」 というのは、努力したりして手にはいるもんじゃあ無いです。
以前立ち読みしたハゲ智英先生の文章にあったように、「人間なんてのはただ生きているだけで、勝手に愛情などという得体の知れないものがあふれ出て、勝手にその対象を見つけて妄念を抱くもの」 なワケです。
だから、漫画に愛情なんか傾けず、ただこうすれば売れるというテキスト通りに描いて成功させるというのは、それはそれで、「誰にでも出来ること」 じゃあ無いですよ。
それは多分、「漫画 (等の生業とする対象) に、愛情やこだわりや情念を持たずに向き合える才能 を持った人にのみが使いこなせる、「成功論」 です。
多分まぁ、この三田紀房氏は、その才能に恵まれていたんです。
性格素養に適したやり方を、巧く選択できたという。そういう事なんだろうと思います。
んで、それが出来ない人間は、それが出来ない情念や何かを引きずったやり方や、バランスの取り方でしか、やっていけないのですよ。
まぁそんなワケで、僕的な結論としては、「三田紀房は、正しいけど面白くない人。山田玲司は間違っているけれど面白い人」 という事です。漫画と言うより、人としての話で。
山田玲司はもう、己の情念に引きずられまくりですからねー。んで、 「やりたくも無い売れる方法論」 でスマッシュヒットを出したことを、誇りつつ恥じるという実にステキな懊悩を抱え続けている人。
そういうカッコワルサが、僕は結構好きです。
おっ!久しぶり。
「処世術」と「こだわり」はまた別の話で
ヘボ氏も言ってるが、処世術を否定したくはない。
ただウサン臭さを感じるとすれば
「方法論さえ掴めれば誰でも成功できる」
の「誰でも」の部分だな。
人生哲学を語るのは結構だが、
これを「万人共通のメソッド」とする時点で
途端にいかがわしくなる。
方法論は「誰でも」掴めるモノではないのだ。
問われるべくはその新興宗教っぽい
安っぽいセンスじゃねーか?
ところで『ドラゴン桜』の作者って東大出てるの?
俺がコレを言うとまたイヤミっぽくなるのだが
東大をネタにするマンガ家って
小林よしのりも江川達也もそーだけど
東大の内情をわかってねーから
入った人間から見るとリアリティを感じない。
結局、空想であり、幻想だと思うのだが?
by petrosmiki (2005-12-04 21:44)
おさしみぶり! に、また壊れていたPCがようやく直った・・・っぽいところですっ!
どんだけ壊れりゃ気が済むンじゃい。
さくっとアレですが、「いわゆる成功論を語りたがる人たち(教えてもらいたがる人たち)」 の中にある共通した心理は、単純にいえば不安感なんだろうなぁとは思います。
「自分はこれこれこういう正しい成功論を持っているから、自分の人生は正しいんだ」 と、思いたいから自分のそれまでのやり方を成功論として喧伝したがるし、教えてもらいたがる。
特に漫画家だとかなんてのは浮き草稼業で、いつ飽きられ見向きもされなくなるかわからないものですから、ついそういうモノに頼りたくなるのかもしれないですなーん、と。
まぁ先行きだとかこれまでの人生がよかったのかどうかなんてのはたいがいの人にしてみれば不安なもんですが、それが本来的に不安で当たり前だということをうけいれられないと、そういうハッタリに走りやすい。
みたいなところかしらんとか思いの助。
by へぼや (2005-12-29 03:56)
なんだ。しばらく更新して無いなぁって思ってたらパソコン壊れてたんだ
by 名無しさん (2006-01-01 09:09)
うむ。どうやらそうらしい。
by へぼや (2006-01-04 03:30)
PC壊れてたか。
俺のブログをちょっと手直ししたついでに
こっちへの誘導の文句を削除したのだが
しばらく没交渉だったし、この状態で万一
へぼ氏に迷惑かけるとマズイかなって以外
特に他意はないのであしからず。
調子がよけりゃ土曜日にフォローを頼みたい
ところだが大丈夫かね?
そーじゃなくても
また最近so-net blog重いしなぁ…
何とかならねーのかこの状態は。
by petrosmiki (2006-01-10 04:00)
ペトロさんアクセス解析とかつけないんですか?そうすれば多少なりとも荒らしも規制できると思うのですが?
あとジェネジャンで話せなかったことをネットラジオで好き放題言うってのはどうでしょう?ジェネジャンに出てた風俗嬢もライブドアのネットラジオやってるみたいだし・・・・・・・・・まー面倒くさいし何の得にもならんから、やらないとは思いますが。
by ペトロンに首っ丈 (2006-01-10 06:51)
アクセス解析つける手間が面倒だなぁ。
大体そこまでして荒らしのバカとつきあいたくもねえし。
ジェネジャン出てた風俗嬢がネットラジオなんて
やってんだ?試しに聞いてみよっと。
by petrosmiki (2006-01-10 07:45)
土曜日(ジェネジャン実況)に放送するらしいですよ。ピアキャスト使った動画配信もしてるらしいです。たしかDJ名は菜癒とかで、タレント名は~~ライム?だったかな?
by ペトロンに首っ丈 (2006-01-10 11:42)
お、そうだ。土曜日にあるんだっけ。
まぁこう言ってしまうのも何なんですが、しょーじきあの番組であのテーマは、かなり俺的に引くンですよなー。
引くっつうか。あの面子がなんかまじめフェイスで何の工夫もない道徳的発言とかするのかなぁとか想像しちゃうと、っていうね。
ね。ね。みたいなねっ!
by へぼや (2006-01-10 20:57)
そう、他でもない今回の俺のテーマは
「何の工夫もない道徳的発言」に対する
アンチテーゼなのだ。
もっとも、最後まで見ると腹立てるかも。
てゆーより、ヘボ氏は多分笑うと思う。
それじゃ土曜日宜しく。
by petrosmiki (2006-01-13 11:00)