「俺は苦労人のたたき上げなんだよ」目線からの、映画『ブラック会社…』 [ヘボ論]
会社を定時に帰るのは都市伝説!?驚愕の月給9,000円のブラック会社も好きな仕事は我慢? - シネマトゥデイ
映画化のニュースが流れたときからなんとなく予感というか予想していたけれども、ここの記事のやりとりを見るに、「俺は苦労人のたたき上げなんだよ、おまえら世の中甘く見てんじゃねえぞ」 な監督の意識が感じられる。
そういう話に落とすべきテーマじゃねえと思うんだがなあ。
もともとのスレの事とかは別にさほど関心もないので良いんだけど、こういう、所謂一般企業、一般職でない職種の人間の、「俺も昔は苦労したんだよ」 話ほど、世の中的にカケラの意義も価値もないものはない、と、基本的に思う。
「いや、お前の話はどうでも良いし、お前が苦労の末、結果今成功しているかどうかもどうでも良い。
そんな自慢話は飲み屋で好きなだけやってもらって構わないが、個人の苦労がドーノとかホント、興味もないし関係ないから。
社会構造として、我々がどういう社会を目指すべきか、そのためにどうすべきかという事の話と、個人が個人として生きる上では苦労して努力することが必要かどうかってのは、まったく別の話だし、対立させる事ですら無い。
どんな社会構造になろうと、個人が個人として努力して苦労して生きていくなんてのは、当たり前の話なんだから」
社会問題として扱うべきテーマを、結局単なる個人の苦労話感動話程度のものとしてしか落とし込めないのだとしたら、それは技術とか作劇論とか以前の、なんというか作家性、或いはもっと踏み込んで言えば、人間性の問題のよーな気がする。
*--[記事より抜粋引用]--*
> 明大学園祭の一環で開催された本試写会。これから就職をする大学
>生を対象に実施したアンケートの結果をふまえて、「働くこと」をテ
>ーマにトークが進められた。劇中に「定時に帰るなんて都市伝説なん
>だよ」というセリフがあったことを受けて、「本当ですか?」と聞か
>れた監督は「都市伝説でしょう」とバッサリ。「自分がやるべき仕事
>を、自分がやるべき時間でやる。それで会社が儲かれば、そこから
>ギャラをもらうということなんじゃないですかね。もちろん、だから
>ってブラック企業がいいとは思ってませんけど、でも今の大学生は定
>時に帰ることを美しいと思っているのかな?」と現在の大学生の意識
>を図りかねている様子。そこで「定時に帰りたい人います?」と逆質
>問すると会場内からもパラパラと手が上がり、「クーッ。意外といる
>ね!」と苦笑いをする監督だった。
>さらに監督は「21~22歳のときにドラマの制作会社に入ったんですけ
>ど、そこがブラック会社だったんですよ。休みもなく走り回ってて、1
>か月の手取りの給料が9,000円。3か月たったら上げてやるからなと社
>長に言われて、一生懸命働いて。4か月目にもらったのが1万円。それ
>から半年たつとようやく3万円になるわけ」と付け加えると、驚愕の給
>与体系に驚きを隠せない会場内だった。しかし「でも助監督のときに
>監督になりたいなと思ったらドラマが撮れるようになって。映画撮れ
>るようになりたいなと思ってたら、映画撮れるようになって。日本ア
>カデミー賞取れないかなと思ってたら日本アカデミー賞がとれて。何
>かね……幸せものですよ」と話す監督の興味深い話に、熱心に耳を傾
>けていた学生たちだった。
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この引用部分から、「ブラック企業だの何だのガタガタ言ってんじゃねーよ、俺なんかもっと苦労してンだぞあぁ?」 な自慢話臭がぷんぷんするんだけど (記事の見出しから、どーもこの記事書いた人もその匂いを感じ取ったぽいんだけど)、まあ。
細かいツッコミすると、普通に考えて月9000円で大の男一人が一人で生活することは不可能なので、衣食住最低限の部分は他でまかなっていた(友人か、会社なのか、女か親かは知りませんが)のは間違いないのだから、そこだけポンと持ってきて比較するのも変な話だなあ、というのもあります。
僕の以前の知り合いでも、零細ゲーム会社に勤めていて、実家住まいながらも半年かヘタすると1年近く給料未払いで働きづめの人が居ましたよ。
彼はゲーム会社に勤めるのが夢で、それだけでもうウレシイらしいし、苦労して働いていると言うこと自体にも喜びを感じているっぽかったんですが、でも、「それは “他人に押しつけて良い美談” じゃあねぃぞ」とは思いますわ。というかそうです。
が、それは置いておくとして。(ここはあくまで、このカントクは発言の中にそう言う不公正な詐術を平気で滑り込ませる人物なのではないかという事を示すためのツッコミ)
敢えて原則論的なこと言えば、個人が稼げないのは、その個人の責任によるものが大きいという事で良いですよ、まず。とりあえず。
カントクが月9000円だったのは、月9000円で満足していたからです。とりあえずは。
けど、会社が稼げないのは社員の責任ではなく経営者の責任で、「サービス残業なんか当たり前だろボケ。文句言うなんて世の中舐めてンのかてめーら」 ってのは、要するに経営者が自分の責任を社員に押しつけているだけでしかない。
この責任というのは、稼ぎを出せない、会社に貢献し得ない社員を雇わない、解雇する、という事も含めた責任だし、勿論当然、社員がより効率よく仕事をし、順法精神に則った上で営業利益を上げられるよう社内環境を整える責任でもある。
そして何より、経営者個人の利益だけではなく、企業としての社会貢献をする、それを目指す責任でもある。
そんな責任なんか負いたくない、冗談じゃない、自分や自分の身内仲間内だけ儲かればそれでいい、というなら、それこそ経営者になるべきじゃない。
雇われる立場はイヤだから、って経営者になっておいて、責任は個人商店レベルしかお断り、なんて虫が良すぎだろう。
そここそ、経営者になると決める段階で生まれる自己責任じゃないのかしらん、と思うんだが。
違うのか!?
零細中小企業で進退ままならないことになって、すまんがこれこれこういう事情だから、俺(経営者)も苦労するし君ら(社員)も一緒に苦労してくれないか、とかまあそういうお話は、それぞれ個々のケースとしてあるだろうけれどもさ。
今現在問題視されているブラック企業だとか所謂派遣の問題、それからみなし役員の問題とかって、そういう 「零細企業の苦労話」 の枠で語ることじゃないじゃない。
それこそちょっと前にブームになった 『蟹工船』 と同じ。
企業が法の目をくぐり、或いは政治家に働きかけ結託して、「効率よく労働者を搾取するシステム」を構築しているというお話しじゃない。
完全に、社会システムとしてどうあるべきか、そういう構造を是とすることが、我々にとってのあるべき社会の在り方、目指すべき未来の形なのかという、根本が問われている話じゃない。
コメディ映画とはいえ、そもそもがそういう問題を根本的に内包しているテーマなんじゃあねぃんですかね、カントクさん。
あーたの苦労話なんかどうでもよござんすよ。
えーと。
このカントクの撮った映画、『キサラギ』 をお勧められていて、自分も興味があって、ちょいと前にDVDを借りて見たのですよ。
(以下、ややネタバレ含む)
んでまあ、僕はちっとばかし小劇団的な演劇っぽいのは好きで、それなりに楽しめたのですが、ご存じ! ライムスター宇多丸のキサラギ評がかなり痛烈で。
まあ、それはそれで聴けば「成る程、わからんでもない」 という内容の批評で。
で、その中で一つ、「死をテーマの一つとして扱っている内容なのに、このカントクは倫理観の置き所がおかしい」 というものがあったのですね。
要するに、(あくまで要するにですが)色々なことが重なって、結果、一人の人間を(全く誰も望んでいなかったけれども)集団で死に追いやってしまった、という物語上の(仮定ではあるけれども)一つの事実に対して、登場人物の全てが、
「良い話"げ" な所に落とし込んで、ただ自己満足的な感動に浸っているという終わり方は、すごく気持ちが悪い」
という事を言っていたのですね。
これは、確かにその通りなんです。
僕はこの話自体を、「よくある小劇団的な軽いブラックユーモア」 として見ていたので、その部分はさほど気にはならなかったんですが、確かにそう言う構造であること自体は的はずれではない。
で、まあ、そのこと……(物語上の倫理観の置き所がおかしいという事) ……と、今回の記事を重ねて考えると。
……ねぇ。
なんか、「世間知らずの糞ニートの若造が、過酷な社会に踏み出して、ドタバタコメディ的苦労を重ねつつ、"なんとなく成長して"、"なんとなく感動げな感じで"、"なんとなくまとまっている感じ" に終わるけれど、も。 扱っているテーマそのものには、何一つきちんと踏み込まない、"そこそこに、らしげなだけの日本映画" の典型」
に。
なってそーな気がしてしまうのは、僕の心が醜く歪んでいるからで、きっとすごく面白い映画に違いないですー。
ぜったいそーですー。
おもしろいにちがいないでスゥー。
うんこもれたでスゥー。
文句は見てから言いなさいよ! 文句は!
僕は見てないし見る気がないから、文句は一言も言いませんよ!
というわけで、『ブラック会社』、オススメです!!
ブラック商会変奇郎 (1) (藤子不二雄Aランド (Vol.031))
- 作者: 藤子 不二雄A
- 出版社/メーカー: ブッキング
- 発売日: 2003/01
- メディア: 単行本
いくつか読みましたがどれも引用以外の文がひどいですね
もうちょっとよく考えてから書いた方がいいんじゃないでしょうか
by マリオ (2010-03-06 09:33)